2026年6月21日「神が前もって決めておいた仕事」

2026621日 花巻教会 主日礼拝説教

聖書箇所:使徒言行録13112

神が前もって決めておいた仕事

 

 

 

ホーリネス弾圧事件

 

本日、ホーリネスの伝統を持つ教会では「ホーリネス弾圧を覚える礼拝(弾圧記念礼拝)」がささげられています。ホーリネス教会弾圧とは、1942626日以降、ホーリネス系の教会(日本基督教団 旧6部・9部)の牧師が一斉に検挙された出来事のことを言います。治安維持法違反という理由で、96人の牧師が検挙され、その後、さらに20人が追検挙されました。ホーリネス系の教会も強制的に解散させられました。

 

弾圧のさ中、日本基督教団はホーリネス系の教会・教会員・牧師を守ることをせず、むしろホーリネス系の牧師たちに辞任を強要し、事実上教師籍をはく奪しました。私たちが属している日本基督教団はその時、ホーリネスの教会・教会員・牧師を見捨てるという過ちを犯しました。日本基督教団の歴史において忘れてはならない出来事です。

 

私たち花巻教会はホーリネスではなくバプテストの伝統を持つ教会ですが、同じ奥羽教区では現在、大三沢教会、脇本教会、八郎潟教会、大船渡教会、舘坂橋教会、土沢教会が「日本基督教団 ホーリネスの群」に属しています。

全国のホーリネス教会で弾圧を覚える礼拝がささげられている今日、私たちも共に、ホーリネス弾圧事件を思い起こし、祈りを合わせたいと思います。

 

 

 

「スパイ防止法」関連法案

 

今から84年前に起こったホーリネス弾圧事件について述べました。戦時中の治安維持法違反による宗教弾圧、言論弾圧は、今を生きる私たちにとっては過去の出来事に思われるかもしれません。しかし、果たして、過去の出来事だと言い切れるでしょうか。

 

423日、「国家情報会議」とその実務を担う「国家情報局」を設置するための関連法案が衆院本会議で可決されました。国家のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化のためという名目ですが、すでに多くの方によって指摘されている通り、情報収集の恣意的な運用により、私たちに市民に対して深刻な人権侵害が引き起こされる危険性があります。個人のプライバシーが侵害されたり、思想・良心の自由や信教の自由、表現の自由等が侵害される恐れがあるのです。これらの人権侵害は、まさに戦時中に治安維持法(および防諜法令)によって引き起こされたことです。

 

今回の国家情報局法案はいわゆる「スパイ防止法」の第一段です。今後、外国代理人登録法の提出、さらに対外情報庁設置法案の提出が計画されています。アメリカにCIA(中央情報局)という情報機関がありますが、これらの法案が目指していることの一つは日本版のCIA(=JCIA)を作ることでしょう。「スパイ防止」という名目で、政府が市民を監視することにならないか、また私たち市民が、互いに監視し合うことにならないかを危惧します。

 

私たちの社会がこれから、さらなる監視社会となってしまうと、私たち市民が国に対して批判の声を上げること自体が難しくなってゆくでしょう。ホーリネス教会弾圧をはじめ、戦時中に行われた国家による宗教弾圧、言論弾圧は二度と繰り返されてはならないことです。

本日の午後1時半より、盛岡の岩手教育会館多目的ホールで「スパイ防止法が狙うものとは ~戦争準備・国民監視の「スパイ防止法」に反対する集会」が行われ、その後デモ行進が行われます。私も参加いたします。

 

 

 

人を「敵」「味方」で判断するのではなく

 

海渡雄一弁護士は「スパイ防止法は、世界を味方と敵に二分する考え方であるというのが一番重要な点」だと指摘しています。「戦争をする国ではないはずの日本が、世界を敵と味方に分けるような法律を作って良いのか、というのが一番根底にある問いになる」とYouTube「スパイ防止法を考える市民と超党派議員の勉強会 第1回」より、https://www.youtube.com/watch?v=rIc56FqblGI

 

情報機関が常に必要とするのが仮想敵です。スパイ防止法関連法案がこのまま成立してしまうと、私たち市民社会全体もまた「敵」「味方」に二分され、分断と対立がますます深刻化し、差別や排外主義が強まってゆくことが懸念されます。

 

聖書は、神の前に一人ひとりの存在が価高く貴いことを述べています。国家、民族、宗教、様々な立場を超えて、生まれながらに持っている人権が尊重されるべきであることを伝えています。憲法の用語で言い換えますと、「基本的人権の尊重」です。多様な、異なる考えを持つ者同士がいかに共存できるかを説くのが聖書の本来の教えです。他者を「敵」「味方」に二分する考え方には、強い懸念を覚えずにはおられません。

人を「敵」「味方」で判断するのではなく、互いを神の目に価高く貴い「同じ一人の人間」として重んじ合う(レビ記1918節)ことができるようにと願っています。

 

 

 

「二度と戦争を起こさない」ことを原則とする政策と外交を

 

また、この度の「スパイ防止法」関連法案の、世界を敵味方に二分する考えは、他国との対立関係を前提としています。言い換えますと、他国との戦争を想定したものであり、戦争に備えるものであると言えます。

 

情報機関は仮想敵を必要とします。アメリカのCIAのような情報機関が日本にも作られることで、他国との戦争を引き起こされるリスクが格段に高まる恐れがあります。情報機関が謀略によって、率先して戦争を引き起こしてきたことは、これまでの歴史が示していることです。

 

戦争を想定した政策ではなく、「二度と戦争を起こさない」ことを原則とする政策と外交を、私たち市民は切に必要としているのではないでしょうか。イエス・キリストは《剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる(マタイによる福音書2652節)とおっしゃいました。イエスさまは武力による解決(=戦争)をはっきりと否定されています。(=平和主義)。

 

 

 

個人の尊厳を社会の基盤に据える

 

今の政権の中心にいる方々は国家に重きを置く考えをもっています。この度の一連の法案も、そのような価値観、国家観から出てきているものでありましょう。国を愛すること、国家を大切にすることはもちろん大事なことありますが、一人ひとりの個人を大切にすることを通して、国家は形成されてゆかねばなりません。主権はあくまで、私たち国民にあります(=国民主権)。その原則を軽んじると、再び戦時中の国家主義に近づくものとなってしまうでしょう。私たちは国家の栄誉ではなく、個人の尊厳こそを私たちの社会の基盤としなければなりません。

 

 

 

神の国の福音

 

 イエス・キリストが宣べ伝えた神の国の福音は、神さまから見て、私たち一人ひとりの存在がかけがえなく貴いことを伝えています。かけがえがないとは、替わりがいないということです。わたしの替わりとなる存在は、どこにも存在しません。あなたの替わりとなる存在は、どこにも存在しません。神の国の福音は、一人ひとりに存在のかけがえのなさ(尊厳)を取り戻してくださる神の力です。

 

イエスさまは生前、病いの癒やしと悪霊の追い出しをご自分の大切な務めとされました。この二つのことは、神の国の到来を見えるかたちで現わしているものだと受け止めることができます。神の国がその人の足もとに到来し、神さまからの尊厳の光が取り戻されたことのしるしが、病いの癒やしと悪霊の追い出しです。イエスさまは生前、自ら人々のもとに赴き、個人の尊厳の光を取り戻すべく働いてくださったことをご一緒に心に留めたいと思います。

 

 礼拝の中で読んでいただいたマルコによる福音書61429節では、イエスさまが12人の弟子たちを派遣する場面が記されていました。ご自身の神の国の福音を宣べ伝える務め、悪霊を追い出し病いを癒やす務めを弟子たちに託すべく、派遣されたのです。弟子たちは二人ずつ組になって、必要最小限の物だけを携え、宣教の旅に出発しました。

いまを生きる私たちもまた、神の国の福音のために働くようにとイエスさまから招かれています。

 

 

 

神が前もって決めておいた仕事

 

メッセージの前にお読みした使徒言行録13112節では、パウロとバルナバが宣教の旅に出発する場面が記されていました。イエスさまが復活し天に昇られた後、聖霊が降り教会が誕生して間もない頃のことです。

 

バルナバとパウロを宣教の旅に遣わすにあたって、聖霊なる神さまはこう告げました。《さあ、バルナバとサウロをわたしのために選び出しなさい。わたしが前もって二人に決めておいた仕事に当たらせるために2節)。二人はその言葉に押し出され、キプロスをはじめ412節)、様々な地で福音を伝えてゆきました。

 

 

私たち一人ひとりにもまた、神さまが「前もって決めておいてくださった仕事」が与えられているのではないでしょうか。神の国の実現のため、一人ひとりの命と尊厳が大切にされる社会の実現のため、それぞれが自分の務めを果たしてゆくことができますようにと祈ります。